4-6 理科教育への協力
4-6-1 スーパーサイエンスハイスクール
岡崎高校は平成19年度より始まる S S H 継続事業に応募し,この提案が文部科学省より採択された。分子科学研究 所も引き続きこの事業を支援していくことに合意した。本年度は以下の3課題の活動に協力した。
(1) スーパーサイエンス部活動(化学班)の支援
・「三層系を用いた光合成型電子移動反応の観察」「フェロインを用いた化学振動」など(指導者:永田准教授)。 本年度は目立った活動は行なっていないが,昨年度指導した生徒(新家和真君)が「全国高校化学グランプリ」 で金賞を受賞。
・「色素増感太陽電池の研究」(指導者:見附准教授)。三つの研究発表会で成果を発表。(第17回東海地区高等学 校化学研究発表会,高等学校文化連盟自然科学部研究発表会,第50回日本植物生理学会「高校生生物研究会」) (2) スーパーサイエンス部活動(物理班)の支援
・「超伝導体YBCO (YB2Cu3O7–x) の作成と高温超伝導実験」など(指導者:中村准教授)。本年度は目立った活動 を行なっていない。
(3) 2年生進路オリエンテーションでの講演 開催場所:岡崎コンファレンスセンター 分子研講演者:平田文男
タイトル:「化学(分子科学)は地球環境・エネルギー危機の『救世主』となり得るか?」 平成 21 年 1 月 26 日(月)午後 13:00–15:00
4-6-2 コスモサイエンスコース
分子科学研究所では,平成20年度に愛知県立岡崎北高等学校が国際的に活躍できる科学技術者の育成を目的に新 たに設置した,コスモサイエンスコースへの協力を,岡崎市にある基礎生物学研究所,生理学研究所とともに開始した。 (1) 「第2回コスモサイエンス・ゼミ」に講師を派遣
開催場所:岡崎北高校 分子研講演者:田中晃二教授
タイトル:「二酸化炭素の科学を楽しんでいます」 平成 20 年 6 月 21 日(土)13:30–16:00
(2) 「第7回コスモサイエンス・ゼミ」
目的:各研究所の施設を見学することで,実際の研究現場の雰囲気を体験し,科学に対する興味,関心を高める 参加人数:コスモサイエンスコース1年生 約40名
分子研見学場所:電子顕微鏡(実験棟地下1F ),UV S OR 平成 20 年 12 月 26 日(金)13:30–16:00
4-6-3 サイエンスパートナーシッププロジェクト
この事業は個人応募型のプロジェクトで高校の理科の先生が大学や研究機関の教育・研究者の支援を得て,応募す るという趣旨のものであり,岡崎西高校の山本幸子教諭の提案がこのプロジェクトに採択された。分子研からは宇理 須教授が協力することとなった。「イオンチャンネルバイオセンサーの製作を通して細胞の情報伝達の仕組みを学ぶ」 という講座を開講することとし,2,3年生の理系で希望した生徒20名がこのプロジェクトに参加した。
(1) 実習1日目(平成 20 年 7 月 19 日午後)
参加生徒20人(3年生男子10名,3年生女子6名,2年生男子4名)を4人ずつの5グループに分け,この日 は各グループから1〜2名の代表生徒のみを引率した。イオンチャンネルバイオセンサーの製作に使用する神経 細胞 P C 12 の扱いについての操作法を学び,実際にクリーンベンチでの培養操作を実習し,細胞を継代して,23 日の実験に使用するために細胞を増殖させた。
(2) 実習2日目(平成 20 年 7 月 23 日午後)
イオンチャンネルバイオセンサーに用いる神経細胞をニューロンとして成長させるコーティング剤の効果を調べ るため,4種類の細胞培養用ディッシュを準備した。グループの2人が細胞外マトリックスであるラミニンやポ リリジンを,ピペットマンを使ってクリーンベンチ内でそれぞれディッシュにコーティングした。それ以外に無 処理のディッシュと培養用の市販のディッシュの計4枚をグループ毎に用意した。
(3) 実習3日目(平成 20 年 7 月 26 日全日)
4種類のディッシュで分化した細胞を顕微鏡で比較し,どのディッシュが最もニューロンとしての分化を促進し たか比較した。また,実際の研究に使用するイオンチャネルバイオセンサーでの細胞のネットワークの様子を画 像で見せ,研究方法の説明を行った。一連の実験終了後,細胞の情報伝達はどのようにしておこるのか,またバ イオセンサーを利用してどのような研究ができるのかについて,約1時間の講義を行った。生徒たちは難病の原 因究明や治療法の発見のためにこのような基礎研究が役立ち,さらに様々な分野の技術の連携によって研究が成 り立っていることを学んだ。
4-6-4 国研セミナー
このセミナーは,岡崎3機関と岡崎南ロータリークラブとの交流事業の一つとして行われているもので,岡崎市内 の小・中学校の理科教員を対象として,岡崎3機関の研究教育職員が講師となって1985(昭和60)年12月から始 まり,毎年行われている。
分子科学研究所が担当したものは以下のとおりである。
回 開催日 テーマ 講 師
2 1986. 1.18 分子研の紹介 諸熊 奎治 教 授
3 1986. 6. 7
シンクロトロン放射とは
(加速器・分光器・測定器の見学)
渡邊 誠 助教授 春日 俊夫 助教授 6 1986.10. 4 人類は元素をいかに利用してきたか 齋藤 一夫 教 授
9 1987. 6.13 レーザーの応用について 吉原經太郎 教 授
12 1987. 9.26 コンピュータで探る分子の世界 柏木 浩 助教授 15 1988. 7. 2 目で見る低温実験・発光現象と光酸化現象 木村 克美 教 授
18 1988.10.29 人工光合成とは何か 坂田 忠良 助教授
21 1989. 6.24 星間分子と水—生命を育む分子環境— 西 信之 助教授 24 1989.10.21 常温での超伝導は実現できるか 那須奎一郎 助教授 27 1990. 6.23
目で見る結晶の生成と溶解
—計算機による実験(ビデオ)—
大瀧 仁志 教 授
37 1991.12.14 からだと酸素,そしてエネルギー:その分子科学 北川 禎三 教 授 39 1992. 7. 7 サッカーボール分子の世界 加藤 立久 助教授 42 1992.11.13 炭酸ガスの化学的な利用法 田中 晃二 教 授 45 1993. 6.22 化学反応はどのように進むか? 正畠 宏祐 助教授 48 1993.10. 1 宇宙にひろがる分子の世界 齋藤 修二 教 授
51 1994. 6.21 分子の動き 伊藤 光男 所 長
54 1995. 6.20 生体内で活躍する鉄イオン—国境なき科学の世界— 渡辺 芳人 教 授 57 1996. 6.28 分子を積み上げて超伝導体を作る話 小林 速男 教 授
60 1997. 6.13 生体系と水の分子科学 平田 文男 教 授
63 1998. 6.12
電子シンクロトロン放射光による半導体の超微細加工
—ナノプロセスとナノ化学—(UV S OR 見学)
宇理須恆雄 教 授
66 1999. 6. 8 レーザー光で,何が見える? 何ができる? 猿倉 信彦 助教授 69 2000. 6. 6 マイクロチップレーザーの可能性 平等 拓範 助教授 72 2001. 6. 5 ナノメートルの世界を創る・視る 夛田 博一 助教授 75 2002. 6. 4 クラスターの科学—原子・分子集団が織りなす機能— 佃 達哉 助教授 78 2003. 6.24 科学のフロンティア—ナノサイエンスで何ができるか? 小川 琢治 教 授 81 2004. 6.22 生命をささえる分子の世界—金属酵素のしくみを探る 藤井 浩 助教授 84 2005. 6.28 環境に優しい理想の化学合成 魚住 泰広 教 授 87 2006. 6.20 電気を流す分子性結晶の話 小林 速男 教 授 90 2007. 6.15 光で探る生体分子の形と機能 小澤 岳昌 准教授 93 2008. 6.17 宇宙の光を地上で作る—シンクロトロン光源— 加藤 政博 教 授
4-6-5 小中学校での出前授業
岡崎市内の小中学校を対象に,物理・化学・生物・地学に関わる科学実験や観察を通して,科学への興味・関心を 高めることを目的に,岡崎市教育委員会や各小中学校が企画する理科教育に協力している。
分子科学研究所が担当したものは以下のとおりである。 岡崎市教育委員会(出前授業)
対象校 開催日 テーマ 講 師
六ツ美北中東海中 2002. 1. 25 光学異性体とその活用 魚住 泰広 教 授 東海中 2003. 2. 18 計算機を使って分子を見る 谷村 吉隆 助教授
常磐南小 2005. 2. 7 光の不思議 岡本 裕巳 教 授
東海中 2006. 2. 8 モルフォ蝶とナノ化粧品の秘密 小川 琢治 教 授 美川中 2007. 2. 26 生物から学ぶ光と色 小澤 岳昌 助教授
矢作西小 2007.12. 4 原子の世界 櫻井 英博 准教授
六ツ美北部小 2008.10. 10 ミクロの世界の不思議 平本 昌宏 教 授
岡崎市立小豆坂小学校(親子おもしろ科学教室)
回 開催日 テーマ 講 師
1 1996.12. 5 極低温の世界(液体窒素) 加藤 清則 技官
3 1997.12. 4 いろいろな光(紫外線,赤外線,レーザー光) 大竹 秀幸 助手
17 2004.11.30 波と粒の話 大森 賢治 教授
23 2007.11.27 身の回りにも不思議はいっぱい 青野 重利 教授
4-6-6 職場体験学習
岡崎市内及び近隣の中学校及び高等学校の要請により,職職場体験学習として中・高生の受け入れに協力している。
年度 受入件数 参加者数 見学受入機関名
2007 5 10
岡 崎 市 立 甲 山 中 学 校, 愛 知 県 立 豊 田 西 高 等 学 校, 岡 崎 市 立 竜 海 中 学 校, 豊 橋 市 立 中 部 中 学 校, 岡 崎 市 立 竜 南 中学校
2008 4 12
岡 崎 市 立 甲 山 中 学 校, 豊 川 市 立 音 羽 中 学 校, 岡 崎 市 立 六ツ美中学校,岡崎市立竜南中学校
4-6-7 その他
(1) おかざき寺子屋教室
(社)岡崎青年会議所との共催で岡崎市内の小学校高学年を対象に,岡崎3機関の研究者が講義・実験を行い,学 校では普段体験できないことを体験してもらい,小学生に科学に対しての夢や憧れを持ってもらうために実施するも のである。1995年より年1回行われ,岡崎3機関の研究所が順に担当していたが,(社)岡崎青年会議所の都合で, 2006年度をもって終了した。
分子科学研究所が担当したものは以下のとおりである。
回 開催日時 会 場 講 師 テーマ
1
1995.11.11(土) 13:00-16:00
岡崎地域職業訓練センター
井口 洋夫 名誉教授 加藤 立久 助教授
めざそう理科博士
2
1996.10.26(土) 12:30-15:00
岡崎商工会議所中ホール 鹿野田一司 助教授 低温物理学実験
5
1999.10.23(土) 13:30-16:00
岡崎コンファレンスセンター 分子科学研究所
谷村 吉隆 助教授 目指せ! 科学者
8
2002.10.19(土) 14:00-16:30
分子科学研究所 魚住 泰広 教 授 僕も私も名探偵
11
2005. 5.29(日) 14:00-16:30
山手3号館大会議室 宇理須恆雄 教 授
アトム誕生
—ナノテクノロジーの世界— 備 考
参加者:小学校5〜6年生 40〜50名程度
開を行った研究所が,翌年に協力し作成することが慣例になっている。作成にあたっては,各項目ごとに市内中学校 の理科担当教諭及び中学生徒2名程度が,分子科学研究所の担当教官を訪問して,インタビューを行い,両者が協力 して,資料を作成する。
中学校理科副教材(冊子)
「分子のしくみ」 1998年9月発行
中学校理科副教材(パネル)
「分子で見る物質の世界」,「光で分子を見る」,「鏡に映った形の分子(光学異性体)」,
「ナノサイエンス 10億分の1の世界」 2001年10月作成
(3) 岡崎市小中学校理科作品展
岡崎市教育委員会の要請により,岡崎市小中学校理科作品展に岡崎にある3研究所が輪番(原則として3年に1回) で体験型のブースを出展している。最近では分子科学研究所が2007年に担当し,パネル展示のほか,子どもたち自 らが色素増感太陽電池の作製や酸化チタンカラフル塗装を体験できるブースを出展した。次回の出展は,2010年が 予定される。